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Romance夢紀行

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LOVER UNLEASHED あらすじ BDB#9 (中編)

第20章 マニーはパインの手を握り、具合はどうだいと聞くと、状態は変わらない、足が動かないとパインが訴え涙を流します。彼は力になってあげられなかったことにがっかりし、最新のMRIがみたいと思いますが、まずは心のケアが先決だと思い、インターネットはあるかいと聞きます。パインは何のことだかわからないようでしたが、パソコンは隣の部屋にあると思うというとマニーが見にいきます。

いいかい、俺は君の主治医だよな? 君には真実しか伝えない。何か隠したりしない。真実はそれ以上でもそれ以下でもない。君は手術後、ずっとこの部屋にいたのか、それならどこにいるのかわからないでいるのも無理はない。抱き上げても構わなければ連れ出してあげようと言ってマニーは管に気をつけながら抱き上げます。パインは重いでしょう、と恥ずかしがりますが、マニーは君は完璧だと断言します。

マニーはパソコンの前で腰を下ろし、パインからモニターをみれるようにします。パインはマニーの顔を見つめるばかりで、マニーは一生そのままでもかまわないと思ったものの、モニターのほうをちょっと見てもらったら、そのあと好きなだけ俺を見つめてもらって構わないというと、パインがモニターに目をやり、興味を惹かれたことがわかります。これは俺の友達で、以前の患者でもあるポールだ。彼は何年も車いすで生活しているんだよ。

これはレース? ボストンマラソンの車いす部門だ。彼がゴールテープを切ると、素敵な女性が駆け寄って彼のことを抱きしめ、彼女の腕の中には彼と同じ肌の色の赤ちゃんがいました。他にもたくさんの写真があり、別の場所で写されている彼は健康そうで笑顔で、そばには同じ女性と赤ちゃんがいました。彼の脚は小さくよじれているようでしたが、彼の力強さと知性で、他の人は気にしないでしょう。彼は10年くら前に酔っ払い運転の車に自転車で轢かれ、麻痺している。俺は7回執刀したよ。彼女とは、事故のあとに恋に落ちたんだ。彼は起業家で、アスリートで、普通の健康なひとよりよっぽど充実した人生を送っている。彼を友達と呼べて誇らしいよとマニーは伝えます。彼はコードウェル市の市長なんだ。

聞いて欲しい。君の脚は君の一部でしかなく、君そのものではない。怪我で君は何も損なわれていないと知っていてほしい。車いすに座っていたとしても、君は以前と同じく背が高いままだ。君の人格やどのように生きるかということとは関係ない。

パインがもっと見てもいいかしらというと、マニーはマウスの操作を教え、何度か挑戦すると上手くできるようになりました。私できるわ、とパインが言うと、君ならなんでもできるよとマニーは耳元で励まします。

マニーの腕の中に体重を戻すと、パインはマニーを見上げ、キスしてもいい?と頼みます。苦しそうな様子のマニーに、あなたは私のことを欲しがっているわ、というとキスじゃ足りないよとマニーが告白します。何をしたいの?とパインが聞くと、何もかもが欲しいが君に準備ができているかどうかわからないとマニーが言い、パインは何をするかは私が決めるわと宣言すると、仰せの通りにとマニーはニヤッと笑います。

第21~22章 ヴィシャスが回復室に入ると、妹は主治医の腕の中にいました。彼が引き離さなかったのはひとえに彼らが車いすレースの様子が表示されている目の前のモニターに見入っていたからでした。マウスの使い方を教えてもらい、私できるわとパインが言った様子をみて、マニーが期待以上の仕事をしてくれたことがわかります。なんで俺もジェーンもパインを部屋から出してあげて、他の世界を見せてあげることを思いつかなかったんだ、と思い、彼が用なしになるまでは始末できないと思います。

部屋をでるとブッチがいて、お前の女と話をする必要があるぞと言いにきます。彼女、荷物をまとめてるぞ。

マニーはパインとキスしていましたが、なんとか彼女から身体を引き離すと、彼女が傷ついた顔をします。違うんだ、君の兄さんがそばにいるぞ。俺自身は君が欲しくてたまらない。

パインの牙が飛び出してきて、部屋の明かりが消え、部屋がロックされます。マニーは明らかに彼女が捕食者であることがわかり、彼女に噛まれることを想像してゾクゾクします。彼が首筋を差し出すと、パインはゆっくりと近づき噛みつきます。

ヴィシャスは出かけようとしますが、足が動きません。あいつはパインが死ぬのを助けようとしたんだ。パインは俺の唯一の家族なのに。それを聞いてブッチは言葉もありません。ヴィシャスは脳が沸騰してきて、両手がひかり、自分でも危ないと思い、ブッチに頼み武装解除してもらいます。俺にできることはないかとブッチに言われ、お前にはやり通す根性がないだろうとヴィシャスは言うものの、お前を生かしておくためなら何でもやるさと言い切ります。お前、レッサーがいい選択肢だと思ってんのか。俺なら少なくとも最後にお前が死ぬことはない。本気じゃないだろとヴィシャスが言いますが、ブッチはお前の女に会ってこい、俺はエスカレードで待ってるといって行ってしまいます。

ジェーンは寝室でクローゼットから白いシャツを出そうとしていましたが、気持ちが乱れて実体でいるのが難しく、苦戦しながら服を出しています。靴の上にVの洋服のようなものがみえ、取り出してみると黒い蝋と血にまみれていました。

誰と一緒だったの? 誰とも一緒じゃなかったとヴィシャスは言いますが、ジェーンは信じられません。ブッチなの? 黙ってしまうヴィシャス。ブッチならしょうがないと思えるけどとジェーンがいうとヴィシャスは意外そうな顔をみせますが、無言です。しまいにこれが必要なんだろといって、ジム用のボストンバッグをポンとクローゼットから投げてよこしていなくなってしまいます。

第23章 マニーはぐったりしていますが、満足気な表情です。マニーの血は芳醇で、ワインのようにパインの喉を流れていき、全身にしみわたっていくようです。君にすべてを教えたい、すべてを見せたい、君のすべてをみたいけれど、まずはシャワーを浴びたいと言うと、あなたのすべてを見たいわとパインもいいます。彼女を抱き上げると、君自身の光だけだと足元が危ないから電気をつけてもらえるかと言われて、パインは自分が光っていたことに気付きますが、ひとまず電気をつけ、部屋の鍵をはずし、ベッドに運んでもらいます。マニーは丁寧に彼女を居心地のよい姿勢に整え、シャワールームに消えます。ドアの隙間から、彼の姿がみえます。パインは服を抜いてシャワーブースに入っていく彼をもっとよく見たいと思い、少しずつ姿勢をずらしていきます。そこからだと彼が身体に石鹸を塗ってキビキビと洗っている様子が見えます。もう少し・・・。

彼と視線が合い、恥ずかしさに真っ赤になり、パインは急いで姿勢を戻しますが、マニーは石鹸がついた裸のまま飛び出してきて、彼女に覆いかぶさります。気が付いているか、君は今ベッドで膝立ちしていたぞ。

パインの脚を診察してみますが、相変わらず感覚は戻っていないようです。腰にタオルを巻き、隣室の看護婦に頼んで彼女のMRIなどを全部出してもらい、確認すると、手術は成功し、骨自体は正しく戻っていることが確認できました。

パインは起こったことは気のせいだったと思っていて、マニーは自分自身の記憶に自信が持てず、室内の画像記録を誰かに見せてほしいと思い、部屋を出ます。鍵の閉まっているドアも多く、ガレージに続くドアを開けると、前回訪問したときにみた顔の男がいました。ボストン訛りでレッドソックスの帽子をかぶっています。腰にタオルを巻いただけのマニーに、その恰好で妹のまわりをうろついているのをヴィシャスに見られたら、折られた足の手術を自分ですることになるぞといいますが、事情を話すと、協力してくれます。

第24章 クスコーと一団は飛行機の夜行便を何度か乗り継ぎコードウェルに到着しました。車と騒音と人の多さに辟易しますが、スローがどうやってかドゲンつきの屋敷を手配してくれ、そこに落ち着くことになっています。

兄弟団や王に遭遇する前にコードウェルのことを知っておきたいとクスコーが配下を連れ街を歩いていると、青いライトを点滅させている警察車両が停まっていて、近くから人間の血の匂いがしています。クスコーは興味を惹かれて遠目に観察しますが、その場を去ります。

ホセ刑事は殺人現場に来ていました。段ボール箱に入った手足がもつれた遺体をパートナーや捜査員たちと引き上げ、遺体袋に入れる前に改めると、拷問されたあとが認められ、おそらくこの若い女性は連続殺人犯の被害者2人目だろうと思います。遺体から目をあげて周囲を確認すると、身体が大きく、身体をすっぽりつつむ革のコートのなかにどんな違法な武器を隠し持っているのかと思わせる危険な雰囲気の男たちの集団がいました。危険に見えるという理由で市民を職務質問するわけにいかず、見逃すことにしますが、軍隊風のフォーメーションで移動している様をみて、リーダーの顔を頭に焼き付けることにします。細くとがった顎、こけた頬、口唇裂で、母親しか愛してくれそうにない顔でした。

急にフラッシュが光り、カメラマンが黄色いテープを乗り越え、被害者の写真を撮ったようです。車に向かって逃げ出したカメラマンをヴェク刑事がものすごい勢いで追いかけ、乗り込んだ車に掴まって振り回され、空中に降り飛ばされます。ホセは心配して駆けつけますが、ヴェク刑事はカメラマンからカメラを取り上げ、顎をしこたま殴りつけます。

第25章 マニーはブッチがパソコンのフォルダのあちこちを見て警備カメラの記録を探しているのを見ていると、ジェーンがお手伝いしましょうかと声をかけてきます。顔色をみたブッチが心配して、少し部屋の外で話せないかと連れ出します。ジェーンは、どうかヴィシャスを助けてあげて欲しい、なんとか彼が乗り越える手助けをしてあげて欲しいと頼みます。ヴィシャスが黒い蝋燭と血がついた衣服を隠していたことを告白すると、ブッチはあの日は3人のレッサーにわざと鎖で嬲られていたんだ、他には誰もいなかったと教えます。蝋燭はヴィシャスが自分でやったことだと。ジェーンはそれならなんで話してくれなかったのかと思います。私では彼の欲しがっているものをあげることができないから、コンドミニアムに連れて行ってと頼み、ブッチも二人を助けるために何でもしてあげようと思い、そのつもりだと話します。マニーのことは君が助けてあげて欲しいといって急いでヴィシャスを探しにいきます。

ジェーンはマニーのみたい映像を探し出してくれ、一緒にみてみると、パインが光り輝いて膝立ちしている姿が映っています。感覚は戻っておらず、麻痺状態なのに、なぜこんなことがと思いますが、何度も繰り返し見る内に、あり得ない話ですが、光っている間は麻痺が消えているようだと思いはじめ、ジェーンは書の聖母だわ・・・と口にします。マニーは何のことだかわかりませんが、ジェーンは成り行きに任せたらいいと伝えます。

マニーは、パインに付き添っていられる期間はいつまでかわからず、彼女が回復し、生きる意欲が沸いてきたら殺されて川に流されるなり、また記憶を失わされて戻されるなり、ポイ捨てされるだろうと想像していました。ましてや彼女と恋人関係になるのは、彼女の兄が絶対に許さないだろう、と。

ジェーンが透けてみえるのに気づいたマニーが腰を抜かすほど驚き、車の事故はフェイクだけれど、私はヴィシャスの腕のなかで一度死んだのよと告白します。だからヴァンパイアとか人間とか以前にいまを生きていないんだけど、ヴァンパイアを大切に思うようになったあなたの気持ちは以前の私と同じだから、よくわかると話します。

第26章 ヴィシャスはひとりコードウェルの街をさまよっていました。他の兄弟たちはレッサーたちを狩っているかもしれませんが、彼は一人で戦いたい気分でした。

伴侶のいる男は、その女性なしでは骨抜きのはずですが、彼は彼女が戻ってきてくれた時の喜びに嘘はなかったものの、ジェーンは凍り付いた感情の表層を温めてくれたものの、根っこの部分は凍り付いたままだったと思います。彼らは正式に伴侶になっていませんでした。なんていう時間の無駄だ。ジェーンが彼の服を抱えて話そうとしてくれた時、彼の口はホチキス止めされてしまったようでした。何ていうことをしてしまったんだという罪悪感。問題はそうまでしたことでも、間違ったことをしたと感じてしまうことです。ブッチが申し出てくれた解決策をヴィシャスも一瞬考えましたが、親友に自分を叩きのめさせるというのは望ましい解決策ではないように思えました。彼はこの空虚さの向こうに何があるのかと思い、怒りが込み上げてきます。

レッサーの匂いが漂ってきて、ヴィシャスは勇んで追跡を始めます。匂いのつよい通路にいくと、霧がたちこめていてよく見えません。手袋を外し、行く手を照らすと、真っ二つにされたレッサーがもがいていました。さらに進むと残りの身体があります。首筋に蟻が這うような感覚があり警戒を高めます。

マニーはノートパソコンを手に戻ってきて、パインにあのときの動画をみせます。パイン自身もどうしてそうなったのかわからず、でも私が監禁されていた時は自分の身体が自分のもののように感じられないこともあったからとうっかり口にすると、マニーが怒りで固まります。監禁?誰に? パインは英語は第二外国語だから言いたいことがきちんと伝わらなかったかも、私は母の管理下にあったからと言いたかったのと苦い顔で言い直します。ジェーンと二人で、どういう状況で起こるのか話し合ったんだが・・・。君は俺に教えて欲しいことがあるよね、俺も君に教えたい。マニーは警備カメラをオフにすると、部屋の電気を落とし、パイン、君が欲しいと伝え、少し離れた場所で服を脱ぎ始めます。彼女が見つめているうちに彼が高まっていき、触りたいか? と聞かれたパインはもちろんといい、下を見てごらんと言われてみると彼女はベッドのヘリに腰かけています。マニーは足の横に座ると彼女の脚に優しく触れてみます。温かいわ。ここは? ええ、感じる! 彼女はカバーを払いのけ、もっと感じようとしますが、今度は何も感じられずパニックになります。マニーは落ち着いて、自分を見るんだ。光が消えていました。マニーが俺を見て、それでいいと優しく撫でると、また彼のタッチが感じられるようになりました。目を閉じて。指を唇にかえ、マニーは全身を優しく愛撫します。パインにキスをすると、あなたを感じるわといい、マニーは喜びます。

パインに髪をほどいてもらい、マニーはベッドに一緒に横になると、美しいと言ってくれます。女性としては大柄な彼女は自分を女性らしいとか、美しいと思ったことはないものの、マニーは兄ほど大柄ではないものの、彼女より大きくたくましく、まさに男性といった感じです。彼の指が彼女の服の下へ進み、優しく愛撫すると、彼女の膝が広がり、全身の緊張が高まっていきます。わたし、動いているわ! 知ってるよ、お嬢さん。できるだけこの状態を続けるつもりだ。

第27~28章 ブッチがGPSの情報をたどり、コンドミニアムにつきましたが、シンクに小さな機械が落ちていてヴィシャスはいませんでした。ここにいた時のことを思い出していると、ヴィシャスから今すぐ来てくれと連絡が入ります。お前どうして追跡できないようにしているんだ!とブッチが怒りますが、急いできてくれ、他の兄弟たちにも応援を頼んでいると言います。

ブッチがヴィシャスのところへ着くと、ザディストとフューリー、トール、レイジ、ブレイが現れました。今日はリヴェンジは王様家業でコロニーに出掛けていて、クインとジョンマシュー、ゼックスはローテーションが休みです。

レッサーの切り方をみたレイジやフューリーは、まさかあいつが現れたのか、死んだと思っていたのにと言います。レッサーたちが集まってくる気配がして、戦闘が始まりますが、ヴィシャスがレッサーの脚にナイフを突き刺したところでブッチをみると戦闘のなかで相手のレッサーの魂を吸い込んでいます。戦闘を満喫したいものの放っておけず、なんで状況が落ち着くまで待たないんだといって駆けつけると、今度は別のレッサーに足を攻撃され、ヴィシャスが倒れます。

ヴィシャスの頭を狙ってきたレッサーにブッチが飛び交かり、黒剣で腹を突き刺し倒します。戦闘をよそに二人の目があい、ヴィシャスがお前が必要だというとブッチはわかってると頷きます。でもまずは怪我を治すことだ、エスカレードを取ってくるとその場を離れます。首を伸ばして彼を目で追っていると、新たなレッサーが7人現れ、情勢が不利になります。ヴィシャスは身体を伸ばして手を服の中に隠し、動かないようにして、レッサーをおびき寄せ、屈みこんだ相手を手袋を外した光る手で触れるとたちまち相手は灰になりました。ヴィシャスが保っている目隠しのミスは彼の意識がなくなると保たれません。早く奴らを片付けろ・・・

第29章 パインは腰かけていたベッドからゆっくり立ち上がり、マニーの補助を受けながらゆっくりとトイレに行くことが出来ました。マニーに補助してもらいながらベッドに戻り、再度状態のチェックをすると、感覚が戻ってきているようです。この状態が続くかどうかわかりませんが、疲れただろうから少し休むようにとマニーは言います。部屋にある固い椅子でつきそうというマニーに、一緒のベッドで眠ってとパインが言いますが、やめておくと言い、パインが兄と話したいなら呼んでくるといって部屋を出ようとします。そういえば、君の兄貴はどうして俺を呼ぼうっていう気になったんだ? パインは二人の間のことだからと話しません。

パインはジェーンに自分を殺してくれと頼むなんて、兄とシェランになんて酷いことをしてしまったんだろうと思います。償いが出来たらいいんだけれど・・・。

マニーはおそらく彼女の兄が彼を連れてきたのは、よっぽどの理由があり、パインが死ぬ決意を伝えたからだろうと気づいていました。トレーニングルームまでくるとジェーンが見つけてくれ、パインが歩けるようになったと聞いて驚き、喜んでくれ、ヴィシャスに伝言を伝えてくれると言ってくれます。劇的な改善はなにが理由だったのか、ジェーンは聞きませんでしたが、マニーは彼女とは寝ていないし、俺は仕事が捨てられないと言います。ジェーンは聞いていないけれど、私やブッチ、ベスにも起こったことだから、様子を見てみましょうというと、マニーは寿命が違うんじゃないか。俺はあと40年くらいでいなくなるし、すでに老化の兆しを感じてる。俺のことを気に入ってはいないが、季節の便りがなければおかしいと思う母親と、重症の馬を飼っている。二つの世界にまたがっては生きていけない。愛は現実には打ち勝てないさと言います。

第30章 トレーニングルームにいるクインに、ジョン・マシューの口笛が聞こえました。急いで音の方向へ駆けつけると、ジョンは何てざまだといいます。それにいつもの金属はどこへやったんだ。ライラをお前の部屋に呼んであるから、レディを待たせるなよ? それにゼックスと俺はこれからフレッツに頼んでお前に食事を手配してやる。クインは余計なお世話だとはねつけますが、ジョンは取り合わず、キッチンへ行ってしまいます。仕方なく階段を登っていきますが、足に重しがついているようで、途中で倒れてしまいます。

ライラが部屋から飛び出してきて、抱えるようにして部屋まで連れて行ってくれ、運ばれたトレーから食べさせてくれようとします。クインは最初拒絶しますが、自分の身体を見下ろすと、一週間でズボンがだぶだぶになり、筋肉が落ち切ってしまっていることに気付きます。食べなくてはとライラに強く言われ、反発するのも煩わしく口に運ばれる食べ物を受け入れます。間隔をおいて吐き気をやりすごしながら食べていると食欲が戻ってきました。ライラが血と身体を差し出すと、自分が傷つける前のブレイの顔が思い出され、クインは思わずやめろと言ってしまいます。本当は俺があいつの初めてで唯一の男のはずだったのに・・・。拒絶されたライラは傷ついた様子で、ローブを閉じると手首を差し出します。クインはライラがこちらの世界を探検せず、聖域に戻って戦士たちからの呼び出しを待ってると気づき、なぜだ、フューリーに相談したかと説明を求めます。聖域では巫女は生理的欲求がないため異性の血を飲まないでもいられ、戦士に血を与えても血を飲まずに回復できますが、アディロンダックの館ではそうはいきません。ライラはあなたが戦場で失敗したとき王に報告しますか、あなたの関心事ではありませんのでと突っぱねますが、君は俺たちを助けてくれている、君は失敗なんかしていないだろうと言います。ライラは求められている役割を果たせていないと感じていて、それはクインもグライメラの基準から外れているとのけ者にされていたため、わかりすぎる気持ちでした。ライラの血筋、気高さ、シェランにすれば両親が喜んでくれるどころか誇りに思ってくれるような女性で、彼を望んでくれていて、まさに夢のような状況ですが、彼の心の中には別の人がいて、他の人の入るスペースはないのです。

君に深い気持ちを持てたらよかった。君は俺の夢の女性だ。クインは顔を手でこすると、顔をあげて言います。俺には愛してる人がいるんだ。

第31章 玄関ホールで騒ぎが聞こえ、何かが倒れるような音がして、マニーは目が覚めました。パインは眠っていましたが、ジェーンが扉から顔を出して、怪我人が出て手が足りないので助けてほしいと言われ、マニーはすぐに頭を外科医モードに切り替えます。

トリアージもできていない状態でと言うジェーンと処置室に入っていくと様々な状態の怪我人がいてエレーナが看護したり、老人が水を運んだりしていました。トリアージはジェーンとエレーナに任せ、彼はスクラブをもらい、医療器具を揃えます。レイジとフューリーが大出血、トールとZが骨折の疑い、ブレイが腹に突き刺し傷、ということでマニーはレイジの治療に向かい、ジェーンはフューリーの治療、エレーナがX線と手分けをします。俺は自分で縫えるから他の兄弟を先に治療してやってくれとレイジに言われマニーは驚きます。床に倒れた状態のままだった男の革の洋服を切り、手早く縫い上げ、久々に外科で修業していたときの充実感を感じます。新たな患者が運び込まれた気配がして、ジェーンがそれをみて悲鳴を上げ、マニーが振り返ると、ヴィシャスが車に轢かれたような顔色で、足が奇妙な方向にまがり、レッドソックス帽の男に担がれていました。

ジェーンが駆け寄りますが、医者が身内の手術をするのは予後が良くない場合さらに問題が複雑化するのと、ヴィシャス自身彼女との関係に問題をすでに持っているため、マニーに執刀してもらうしかないと思い、マニー自身も俺がやると言います。部分麻酔を利かせ、治療を始めます。ヴィシャスの膝は砕けているようですが、傷を確認していると、骨盤のほうがより重症ではないかという印象を受け、ひとまず膝を固定し、マニーはブッチに手伝ってもらって体位をかえ、骨盤を嵌めなおす手技を試みることにします。力がいる作業のため、掛け声をかけて作業しますが、ヴィシャスがジェーンのほうをみると、涙を流しながら手元だけは正確にブレイの治療を行っていました。痛みのあまり叫ぶと、気絶する直前に目に飛び込んできたジェーンの目には恐怖が浮かび、彼の苦悩が彼女を苦しめていることが伝わってきました。その瞬間、彼はまだ彼女を愛していると悟ります。

第32章 クインとライラの間には沈黙が広がっていましたが、ブレイロックなんでしょう?と看破されます。軽蔑される覚悟でそうだと認めますが、ライラは同性なのは気にならない様子です。ブレイはあなたの気持ちを知っているのですかと聞くと、クインはあいつには絶対に秘密にしてくれと頼みます。物事には手遅れっていうことはある。いまの彼の幸せを壊したくない。クインは俺たち友達にならないかと提案します。君に俺の血をあげるから、この世界を少し探検したらいい。君にぴったりくる男に出会えば、心の痛みは消えてしまうよと言います。

ジェーンは血で汚れた手術室の床を掃除していました。マニーがいなかったら、今夜は兄弟の誰かを失っていたかもしれない。大量出血していたレイジ、単純な骨折に見えていたトールの怪我・・・。マニーが現れ掃除をかわるよと言ってくれますが、いつから食事をしていないのといってフリッツに食事を頼みます。12時間ほど食べていないようですが、彼は元気そうです。一緒に掃除をしているとジェーンの目から涙がながれ、マニーはティッシュを渡し心配して、あいつの脚を切断してやればよかったといってくれます。フリッツが来て食事はどちらにお持ちしますかと聞いてくれて、ジェーンはオフィスの机にお願いと頼みますが、マニーは俺のバッグはどこだろう、携帯の留守電をチェックしたいといいます。たぶんポルシェにあるんじゃない? 通路の先が車庫よとジェーンが教えます。

第33章 クスコーがひとりで珈琲を飲んでいると、スローがやってきました。グライメラのルールによれば、自分たちが評議会を開いたり、彼らの輪に招待されることはない、と言いますが、あの夏の虐殺のことを手紙に書け、あいつらを非難して注意をひくんだと指示します。スローの金髪碧眼のハンサムさはよい血筋を表していましたが、戦士の庶子でした。妹を汚した男に復讐してほしいと頼んだことでクスコーと関りができたようです。あなたがしようとしていることは王への反逆か自殺行為ではと進言すると、言葉に気をつけろとクスコーが返します。ここではレッサーは野放しで、人間は増えすぎている。俺は王には末永く生きてほしい、ただし王座からは退いてもらい、立場にふさわしい俺が王座に座る。お前は連続殺人犯のことよりこちらのことを優先させるんだ、わかったな。

第34章 マニーが目覚めると、パインがシャワーを浴びたいんだけれどと控えめに頼みにきました。症状は悪化していないようです。シャワーの下に置く椅子があるから用意してあげようと言って準備してあげていると、パインがシャワー室に入ってきて、服を脱ぎ始め、マニーは頭から降ってくるお湯が自分を濡らしていくのも構わず彼女に魅入ってしまいます。

ヴィシャスが目覚めると、回復室で寝かされていることに気付きます。全身が痛みに燃えていますが、手術した膝を包帯を外してみていると完璧な仕上がりで、内側は治癒したことが感じられ、また骨盤も異常なく動くのが確認でき、あの外科医は超優秀だと思います。ジェーンに与えたダッフルバッグが部屋の隅に転がっていて、昨日のジェーンのことを考えます。彼女は患者を分け隔てせず、最高のケアの一歩先まで献身する。それにあの時あったことは、患者と医師という関係ではなく、ヴィシャスを挟んだ女同士に育まれた絆ではなかったかと考えるようになります。

ジェーンはどこにいるのかと思い、オフィスのパソコンで屋敷内のセキュリティカメラを確かめると、戦士たちの自室はカメラが切られていましたが、ジェーンのいる部屋だけが切られておらず、彼女が身体を丸めて寝苦しそうに休んでいるのがわかります。彼女と外科医は何時間も治療に頑張ってくれていたから、いまは休ませてやるべきだと思い、妹の様子を見に行くことにします。

部屋に入ると、ベッドにおらず、「パイン?」とシャワールームの扉を開けると、裸のパインと外科医がいて、ヴィシャスは激怒します。レスニングソサエティが力を盛り返している今、弱点を作るわけにはいかない。こいつは俺たちの半分の力もない人間じゃないか。お前の治療のためだけに呼んだんだから、治療がすみしだい送り返すと怒鳴ります。パインは怒り返し、出て行って! 私の伴侶は私が決めると宣言しますが、ヴィシャスは怒りが収まらず鏡に自分の頭をぶつけて鬱憤をはらすと、血だらけのまま出て行ってしまいます。

第35章 パインたちは血の跡をたどってヴィシャスを探しに行きますが、オフィスにもいないようです。

マニーに自分には帰る家族も、仕事もあると言われ、パインは彼のことを深く考えていなかった自分の傲慢さを恥じます。でも、もしこちらとあなたの世界を自由に行き来できるなら、私と一緒にいてくれる? 答えて! マニーが「でも君の兄さんが・・・」と言いかけると、兄さんなんかクソくらえ。あなたの気持ちを知りたいのとパインが口に出してしまい、これだから私は女性として駄目なのだ。普通の女性は一族の一番年長の男性に自分がどこに住むか、誰と娶せるか決めてもらうもの。こんな私はどんな男性にもふさわしくないのだと言います。

私の母親は神なの。白い光は母から受け継いだ力。殺したいという衝動は父の遺産。両親は子供を授ける条件として子供を引き渡すことに同意していて、3歳のときにヴィシャスは父親のもとに送られ、ずっと虐待されてきた。水鏡で彼をみるたびに、母に報告に行くのに、約束だからといって何もしてくれなかった。だから機会があってこちらの世界にきたときに、彼を灰にしてやったわ。自分の血統を滅したという罰で、実際には女性としてふさわしくないふるまいだということで、母親に数百年監禁されていたの。でも後悔していない。

パインはこのことを話してしまったらマニーに嫌われてしまうと思っていました。マニーは手術のとき彼の鼠径部の古傷をみてわかったことがある。あの傷では死んでもおかしくなかった。君の兄さんは疑い深くて親しくなろうとすると拒否感を示すね。君たちの種族に虐待親がいると聞いても驚かないといえばいいかな。君が父親に復讐した気持ちは理解できる。俺も目には目をのタイプだから。ヴィシャスは明らかに父子関係を壊され、そのことにずっと影響されてきたに違いない。でも君の兄さんのいうことにも一理ある。俺は君のことを守れないと懸念しますが、パインは自分の面倒は自分で見れると言い切ります。

もしも自由に行き来できるなら、君と一緒にいたい。君は美しくて、セクシーで、なんで君の母親や他の人たちが誰かと比べたがるのかわからない。君以上の人はいないよとマニーが言い、パインはこんなことを誰にも言ってもらったことがないと思い、嬉しく感じます。

君の兄さんが君のことを思って反対してくれているのはわかる。だから俺がここにいるにしろ、いないにせよ、俺以外に君のことを見守ってくれる人が必要だ。どちらにしても俺は数十年以内にはいなくなるんだから。本気で俺が年を取っていくのを、死ぬのを見守りたいか? 俺の人生の長さは君に比べたら一瞬のきらめきだ。パインは彼の瞳を見上げると、そうね、あなたが行くところならどこへでもついていくわ、マニュエル。

あなたの世界をみせてちょうだいというと、まだ麻痺がとれて12時間だとマニーは渋い顔をします。種族の違いは乗り越えられないというあなたの主張に反論するのに、あなたの世界のことをもっと知らなくては。着替えてきてくれたら、あとはすべて私が手配するとパインが言います。一緒にいる時間が長引くほど離れがたくなるとマニーは言いますが、それなら残り少ない貴重な時間を活用しなくては。マニーはしぶしぶ着替えに出てきます。パインは部屋の受話器を取り上げると、ドゲンに電話し、私はヴィシャスの妹パイン。お許しいただけるなら、王とお話したいと伝えます。

第36章 ヴィシャスはピットへ向かい、ブッチの部屋のドアをドン!と叩くとちょっと待ってくれという声があり、ローブを着ながらブッチが出てきました。奥にはマリッサが胸にシーツを巻き付けているのが見え、こちらをみています。このままでは自分だけでなく周りも傷つけてしまう。血まみれのヴィシャスの顔をみたブッチは全てを悟り、行こうと言ってくれます。マリッサも心配そうな顔で、ヴィシャスのことを愛しているわ、すべて上手くいくわと言ってくれ、ヴィシャスは古語であなたは神の祝福以外のなにものでもないといい、頭を垂れます。

今晩何があったとしても、二人の関係は後戻りできず、変わってしまうだろうとわかっていましたが、二人はコンドミニアムへエスカレードで行き、部屋に入るとヴィシャスは意思の力で黒い蝋燭の火を灯します。俺をめちゃくちゃにしてくれ。ルールなしだ。

第37章 マニーは不思議とこのところ加齢に伴う疲れが薄らいできたように思います。バカンスに数か月でかけ、海辺でマッサージを受け、ヨガをやったあとのような感じです。パインは王から許可をとりつけ、マニーのところへ駆けてきて、腕に飛び込んできました。彼女の喜ぶ様子にマニーも嬉しくなります。マニーのバッグや携帯電話も持ってきてくれ、どうして自分のものだとわかったんだと聞くと、あなたの匂いがしたからと言います。携帯もラスに聞いて、使えるようにしてくれていました。これから出かけるとして、その後どうなるというと、喜びに輝いていたパインの顔がかげりますが、私たちには数時間あるわ、と答えます。二人に残されているのは数日でも数か月でもなく数時間なのか。君に会わせたいヤツがいるといい、ワクワクしているパインをポルシェに乗せます。

ここで待て、と言われてキッチンにいったブッチを待って突っ立っていたヴィシャスは突然後ろから突き飛ばされ、両腕に手錠をかけられると、腕をあげるように指示され、ギャグをかまされ、全身を拘束されます。ルールなし、という気持ちは変わらないか、と再度ブッチに聞かれ、構わないと意思表示しますが、ブッチが壁に並ぶ道具のいくつかの鞭を通り過ぎ自分をじらしているのかと思ったところで彼が手に取ったものを見て恐怖にもがき始めます。彼は使うつもりではなく、それを恐怖心からコレクションしていました。視界を遮る革製の仮面でした。

彼は父親の部下に身体を押さえつけられ、入れ墨を入れられ、その後鼠径部の一部を切除された経験から、目隠しをされることに強い恐怖心を抱いていました。ブッチは親友の肉体を傷つけることはできず、恐怖も十分に重大なダメージを与えられると考えます。ヴィシャスは脚に触れる金属の感触に現在と過去が入り混じり、恐怖で錯乱し、すべてが一体化したように感じた瞬間気絶しました。ブッチは涙を流しながら拘束をひとつずつ外し、暴れたときにできた傷をスポンジで撫でて血を流し、タオルでふき取り、部屋に飛び散った血を掃除します。彼がヴィシャスの脚に充てていたのはスプーンとお湯の入ったグラスでした。彼が目覚めたときに見える場所にそれを置き、半分昏睡状態のヴィシャスが目覚める気配を感じると、ジェーンに連絡し、自分は外すからといって、彼女を呼び出し、マリッサにも大丈夫だから、いまから帰ると震える指でテキストします。電話だと動揺を隠しきれないからでした。

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